怖さを紛らわしたり、状況の整理をしたり、
Aといろいろな話をしていたんだと思う。
あまり良くは覚えてはいないが。
そして、県道で待機すること小一時間。
遠くから、かすかに消防車のサイレンが聞こえてきた。
普段街中で聞く分には完全に他人事だから、
「うるさいなぁ?」とか、「なんかあったのか?」
程度にしか思わないと思う。
でも、自分が呼ぶ立場になって、そのサイレン音が聞こえてきたときの
あの心強さといったらないよ、本当に。
俺「おい、来たみたいだぞ!」
といって、またバイクに飛び乗る。
あまりの慌て様に
A「おい、落ち着け、ここで事故ってもシャレにならん。」
たしかにまだだいぶ遠いのに、ほんとにテンションおかしかったんだな。
実際、山が曲がりくねっているせいか、聞こえていた音が遠くなったり、
聞こえなくなったり、またかすかに聞こえたりを繰り返して、
初めて音が聞こえてから実際に赤色灯の明かりが見えたのは
さらに10分ぐらいたったと思う。
やっと、まがっている道の向こうから赤色灯がちらちら見えるようになって、
いよいよ消防車が見えた。
消防車1台、しかもおそらく指揮車っていうバンタイプの奴だけ。
たぶん、先行隊で場所や状況を把握して後続の隊に伝えるんだろう。
それが自分たちのバイクに向かってくる。
それを見て、
即座にバイクに飛び乗り、走ろうとしたとき、消防車から
消防C「運転手さ〜ん、運転手さ〜ん! ご案内いただける方ですね?」
大きく「ついて来い」と手で合図して、俺たちは走り出した。
山荘を曲がり、曲がりくねった山道を登る。
消防車は恐る恐るついてくる。
引き離さないように、俺らも慎重に登ってゆく。
そして、駐車場に到着。
ハイビームにして問題の車両を煌々と照らし、
指さしながら「あの車です!」と叫ぶ。
きっと、フルフェイスしているし
消防車も窓はあいていないから、
叫びは誰にも届いていなかったとしても、関係なかった。
消防車は、さっそうと俺たち2台のバイクの抜き去り、
エスティマに横付けする。
そして、中から数人の隊員が駆け下り、エスティマを取り囲む。
さすが彼らはプロ、あれだけ見たくなかった車内も、
何のためらいもなく覗いているあたりすごいと思った。
そして、その中の1人が扉に手をかけた!
開いた! カギはかかっていなかったらしい。
しかし、ぱりぱり音がしている。よく見たら開いた扉の上部にガムテープ。
目張りもしっかりしていたらしい。
ここから、また少しおかしなことになっていくわけだ。