俺「え? それ、見なきゃだめですか!?」
消防B「難しいですか?」
俺「難しいっていうか… う〜ん…」
怖すぎるでしょ。
消防B「難しい状況であれば、無理にとは言いませんよ。」
そうこうしているうちに、Aが戻ってきた。
時間にして10分弱だったかな? 出かけて行ってから。
A「県道から曲がるところの交差点に、山荘がある。××山荘っていう山荘だ。」
俺「いま、仲間が戻ってきまして、県道から××山荘をまがって上ったところだそうです」
Aは山荘の写真も携帯で撮ってきておりそこに電話番号とかも書かれていたから、
全部伝えた。
消防B「県道を北上し、××山荘を曲がるということですね?
まがった先はどうなっていますか?」
俺「一本道で、その先の少し開けたところです。」
このやり取りまで、通報からすで40分近く経過している。
だんだん恐怖と減ってゆく携帯の電池にイライラしてきた俺は、
俺「あの、もう消防隊は出場しているんですか?
さすがにそろそろサイレンとか遠くに聞こえてもおかしくないと思うんですが…」
消防B「いや、まだです。場所が確定しないことには…」
俺「県道を北上するところまでは確実なんですから、早く出場させてください。
自分たちも県道上で案内できるよう待機します」
消防B「わかりました、それでは消防隊を向けます。」
これで、一通りの通報が終わった。
そして、俺とAはバイクに飛び乗り、駐車場を逃げるように後にした。
戻ってみると確かに山荘があった。
普段そんなところ見てないから気づかない。
県道の街頭の下でひたすら消防隊の到着を待つ。
この間も怖い怖い。
風で森の木々が揺れる音、虫の音。
これに交じって人の声がきこえたらどうしようとか、
駐車場から車が下りてきたらどうしようとか、いろいろ考えた。
しかも、市街地から離れた山の中だから、全然消防来ない。
何台か車が通ったけど、駐車場に向かっていく車は皆無。
バイク2台並べて止めた俺たちを見て、
「なんかマシントラブルかな?」ぐらいしか思ってないんだろうなぁ?
なんて思ったりしてた。
トラブルもトラブルだよ、なかなかないよ?
練炭ならさ? わざわざ車の中なんかのぞかないから、
なにか起きてても気づかないで済んでたのに。
なんでまた排ガス? いろいろ募る思い。
そこでAが、重苦しい雰囲気を打開しようとしたのか、
A「いやぁ、しかしまぁ、普段あれだけ冷静そうにしてる<俺>が、
ここまであからさまにうろたえてるのも珍しいもんだな?」
なんて、相変わらず蒼白の顔をニヤつかせながらいうわけ。
俺「んな! あ、当たり前だろ!? こんなの。お前は怖くないのかよ!?」
ムキになって反論する俺。
A「いや、怖いに決まってんだろ。だからさっさと逃げたかったのに…
でも、やっぱりお前よく通報しようなんて考えるな? すげぇわ。」
なんてやり取りしてたら、だいぶ心理的に復活してきた。