・しばらくして社長が戻り、今回の件での俺らの労をねぎらう言葉を言った。
・常務派の奴らは今月一杯、引継等の処理を行った後に退職か片道切符の
転勤又は出向するらしい。
・今夜、席を設けたので4人、いや5人で集まろう。と言われ社長室を後にした。
・自席に戻る途中、常務派の連中から恨みたっぷりの目で見られた。
・二課長は茫然として天井を眺め、その脇でBが淡々と業務をこなしていた。
・間男は俺の顔を見るなり、元々俺のモノだったのにとなぐり掛かられ、
馬乗りになって、お前のせいでと何度も言いながら俺をなぐり続け、何も
知らない社員たちとBに止められていた。
・なぐられている間も、痛みは感じたが怒りは沸いてこなかった。
・この後どうするのかな…そんな事を考えていたと思う。
・間男と引き離された後、部内にやってきた常務に見られ、顔も服もボロボロ
だった俺に、常務の公用車で病院に行きそのまま早退するよう告げられた。
・病院で全治1週間の診断書を貰い、自宅に戻ると俺の顔を見るなり、嫁が
ごめんなさいと連呼して泣き崩れた。
・その脇を通り、少し横になると言い、俺は寝室で横になった。
・電話の音で目が覚めた。社長からだった。
・大変だったな。今日は中止にすると言われたので、いえ、行きます。と
返事をした。夏休み終了まで、あと二週間を切っていた。
・寝ている間、嫁が顔を冷やし続けてくれたようで顔の腫れは幾分マシに
なっていた。
・出かける用意をするように嫁に伝えるためリビングに行くと、既に準備を
終えている嫁がいた。俺の着替えも用意されていた。
・迎えに来た社長の公用車に乗り込み会席の場へと向かった。
・部屋に入ると既に社長、A、Bが座っていた。
・遅れてすみませんと詫びを入れ、Aには男前になったねと毒を吐かれた。
・雑談の後、俺は社長に退職願を出した。
・退職願は受理され、俺は今月いっぱい有給消化をしてからの退職となり
一課の業務を全てBに預けてしまうこととなった。
・Bは何とかなると言ったが、落ち着いてからネズミーランドで俺との
デートを要求し、嫁が受理した。俺が口を挟む余地は無かった。
・社長から、個人的にどうするつもりだ?と聞かれたので、決めていないと
答えると、社長の声と共に奥の部屋から若い男が入ってきた。
・聞くと弁護士で、社長の縁戚に当たるそうだ。費用は社長が持つので、
遠慮なく使えとの言葉を頂いた。せめてもの労いだそうだ。
・弁護士から名刺を頂き、その場は解散となった。
・帰りの車内、嫁は一言も発せず真直ぐ前を向いていた。