娘も、そろそろ思春期に差し掛かろうとしていたし、とにかく不安だった。
彼女が戻ってきてくれれば、また全てがうまくいくような気がしてた。
俺は、今まで悪かったと、本当に心の底から謝り彼女に連絡した。
家の前で、彼女が仕事から帰ってくるのも待ち伏せた。
しかし彼女からの返事は冷たく
「今度待ち伏せたら、警察に言う。ストーカーとして連絡する。」
と言い出した。
俺には、前の器物破損で執行猶予がついていたため、次に何かやらかしたら本当にブタ箱行きだった。
それだけは避けたかったが、彼女の事も諦められなかった。
何とか彼女に思いを伝えようとしたが
全て無駄に終わった。
俺が留置場にいる間も彼女は娘の世話をしてくれた。
それなのに俺は、彼女に恩を返すどころか裏切ってばかりだった。
彼女が出ていってもうかなりたつ。
俺はバイク屋にいった。
そこでふいにバイク屋の兄ちゃんに愚痴をいってしまった。
何でかはわからない。
ただ俺の話を聞いて聞いてくれる友達も
もう、誰もいなかったからかもしれない。
ところがバイク屋の兄ちゃんは何と彼女の友達だった。
もう会わなくなった彼女の話を俺は聞くことができた。
彼女は最近、結婚したそうだ。
それを聞いて俺はかなりショックだった。
まだやり直せると、どこかで思ってたからだった。
兄ちゃんに聞くと、彼女はけっこう金持ちの家に嫁いだそうだ。
兄ちゃんも、彼女の旦那と会ったことがあるらしく淡々と話してくれた。
今思うと、兄ちゃんは俺の事を彼女からの聞いていて俺に腹が立っていたかもしれない。
だから、当て付けのように教えてくれたのかもしれない。
兄ちゃんによると、彼女の旦那はそれはそれは素晴らしい奴だそうだ。
高身長で高収入。優しくて、まさにお似合いだそうだ。
彼女は旦那の仕事を手伝っていて俺と暮らしていた頃からは、考えられないほど身なりも綺麗で、楽しそうにしてるらしい。
俺と暮らしていた頃は、彼女は何でも娘の優先だった。
美容室にもいかず、服も買わず、彼女は我慢してた。
それなのに俺は、僅かに残った退職金を使って自分の趣味の車やバイク、酒や洋服に大金を使ってた。
彼女に、服一枚すら買ってやらなかった。
彼女が、我慢してると知らなかった。