その後、俺と嫁は冷戦状態だった。
俺は、嫁から謝るまでは絶対に嫁に連絡するつもりはなかった。
義母から聞いたんだが
嫁としても、自分よりも娘が大事だと言われたことがショックで
どうしても許せなかったらしい。
だから、嫁からも俺への連絡はなかった。
実は、嫁は子どもが産めない体だ。
自分は決して母親にはなれないからこそ
自分よりも子どもをとる俺の態度が、嫁は許せなかったらしい。
嫁の気持ちは分かるんだが
しかし俺も娘の父親だから、たとえ自分の生活の全てを犠牲にしても、
娘にかかる火の粉は払ってやらなきゃならない
嫁から「ごめんなさい。もうしません」という言葉を聞かないかぎり
嫁を許すつもりはなかった。
そんな冷戦を2ヶ月ほど続けたある日、嫁から連絡があった。
とりあえず別居したいから、その資金を出してほしい
俺が追い出したんだから、一人暮らしの資金と嫁の生活費は
俺が払うべきとのことだった。
嫁は、一月30万あればいいと言う。
「甘ったれんな。もう立派な成人なんだから、
俺と一緒に生活するつもりがないなら自分で金をなんとかしろ。
それに30万とはなんだ?
俺が資格試験の受験のために貧乏学生やってた頃は、一月12万で生きてたんだぞ?」
という言葉が喉から出掛かったが
義父や義母にもこれ以上迷惑は掛けられないと思い、しぶしぶ承諾した
嫁と話すのは久しぶりで関係修復のチャンスだったんだが
勝手極まる嫁の要求にイライラして
用件だけ話し終えたらすぐに電話を切ってしまった。
娘にメールした。
今嫁と別居することになったこと。
だから、もう仕送りのことは心配しなくていいし、
おまえは自分の勉強にだけ集中してほしいということ。
お父さんに会いたくなったら、誰に遠慮することなくいつでも会えるということ
お父さんもおまえに会うことを楽しみにしてるということ
そんなことをメールに書いた。
娘は、俺と嫁の仲を引き裂いてしまったことを酷く気にしてしまって
何度も謝ってた。
嫁との別居が始まってから、そろそろ2ヶ月になる。
嫁が出て行ってから今までに嫁から連絡があったのは2回だけ。
1回目は一人暮らし始めたいと言われたとき
2回目は、前から嫁が住みたがってた都内のお洒落な町で一人暮らしし始めた
という連絡をもらったとき
ちなみに、俺が住んでる所と、嫁の新居は相当距離が離れてる。