娘は構わず
「あなたを父親だとは思っていないし会うつもりも呼ぶつもりも無かったけど周りが煩いから会いに来た。」
さらに畳みかけるように
「これまで何もして来なかったのだから最後くらいお金は出して欲しい。」
私が家庭を疎かにしたことを何度も頭を下げ、心から謝罪をし幾度も復縁をお願いしても頑なに断ったのは元妻のほうだ。
再婚はしているが浮気は断じてやっていない。
元妻が娘に会わせようとしなかったが娘の為に養育費は出来うる限り出した。
私は怒りが湧き、声を荒げ強く否定しようかと思いましたがここは公衆の場。
人様に迷惑がかかってはいけない。
そう思い必タヒで怒りを抑えました。
私は「いきなり答えを出すことは出来ない。時間を貰いたい。」そう言って一旦別れました。
その日から私は落ち着いて熟慮を重ね、私を恨んでいるのは元妻らが私を悪く教え込んだせいで娘は悪くない。
娘の為だから費用は当然出す。娘と元妻の関係は良好で、大切な結婚式を前に私が騒いで関係が拗れてはいけない。
結婚式にも披露宴にも出ないが娘の晴れ姿だけはどうしても見たいから周りに気付かれないよう披露宴を見せてもらう。
娘が幸せになってさえくれればそれでいい。真実は落ち着いた頃に誰も傷つけないよう巧く話そう。
私は身勝手で、屈辱的な受け入れ難い要求を条件付きで呑むことを決めました。
娘との面会以来塞ぎ込みがちになっていたのを心配していた妻に丁寧に経緯を話し、結婚費用の過半を出すことの了解を得、三週間後、前回待ち合わせた喫茶店で娘にそのことを話し渋々ながらも同意を得ることが出来ました。
数か月が経ち娘の結婚式の日、約束通りスタッフの方の誘導で披露宴会場の目立たない場所から、娘の晴れ姿と誠実そうな新郎を見て安心し、会場から立ち去ろうと思いましたが、どうしても娘に直接お祝いの言葉とご祝儀が渡したく、スタッフの方に娘と二人きりで話せるようお願いしました。
披露宴も終わり、娘が控室に戻った時刻に娘へ連絡を取って頂き、スタッフの方の計らいで用意された会議室で待っていると、娘が入って来ましたが心底迷惑そうな表情でした。