部下「さ、どうぞ」
女上司「ホントにすり抜けられるんだ……」
男児「くぅ、くぅ……」
女上司「あら、可愛い。よく寝てる」
部下「この子のプレゼントは……ニンテンドースイッチ。これだな」サッ
部下「さ、行きましょう」
女上司「もう行っちゃうの?」
部下「流れ作業みたいにしないと、とても朝までに間に合いませんから」
シャンシャンシャン…
女上司「一軒目終了ね」
部下「はい」
女上司「ところで、プレゼントはどうやって入手してるの? 自腹?」
部下「まさか。破産しちゃいますよ。それに、ちゃんとサンタ独自のルートっていうのがあるんですよ」
部下「だから、一般の人では手に入れにくいオモチャも用意することができるんです」
女上司「サンタ・ネットワーク恐るべしね」
女児「すー……すー……」
女上司「この子は?」
部下「プリキュアの変身セットですね」
女上司「よく似合いそう」
部下「枕元に置いて、と。どんどん行きましょう」
女上司「うん!」
部下「この子は……プラモデル」
女上司「まだ幼いけど、ちゃんと作れるのかしら」
部下「リカちゃん人形」
女上司「私も子供の頃欲しかったから、親近感あるわ」
部下「この子は……水戸黄門の印籠」
女上司「渋い……!」
部下「明日の朝、“ひかえおろー!”ってやってる姿が目に浮かびますよ」
シャンシャンシャン…
女上司「あなたはどうしてサンタさんになったの?」
部下「親父もサンタをやってまして、その跡を継いでという形です」
部下「高校生の時かな。親からサンタである事を明かされて、将来やってみないかといわれて……」
女上司「迷わなかったんだ?」
部下「はい、親父がサンタってのはなんとなく感づいてましたし」
部下「子供に夢を与える仕事ってステキだな、と思ったから……」
部下「その代わり、この日の夜は絶対空けなきゃいけないですけど。すいません、あんな断り方して」
女上司「いいっていいって。年に一度だし、こっちの方がずっと大事じゃない」
子供「むにゃ……」
部下「この子のプレゼントは、と……」
子供「……ん?」
部下「!」
子供「誰……?」
部下(しまった、起こしてしまった!)
女上司「私に任せて」
女上司「ねんねーんころーりーよー♪」
女上司「おこーろーりーよー♪」
子供「……」
子供「むにゃ……」
部下「助かりました……。こういう事故はたまにあるとはいえ、なるべく見られないようにするのが掟ですから」
女上司「年の功ってやつよ」
シャンシャンシャン…
女上司「袋の中身がやっと空っぽ! 終わったね!」
部下「……」
女上司「どうしたの?」
部下「実は……あと一軒あるんです」
女上司「どういうこと? プレゼントはもうないのに……」
部下「その子の“願い”が……俺には届かなかったんです。つまり、プレゼントが欲しくない子なんです」
部下「こんなこと初めてで……ここで仕事を終えてもいいんですけど……」
女上司「……」