まずびっくりしたのは、ウトにはお妾さんがいた
盆と正月は、お妾さんの家に挨拶に行くよう申し渡された
その家はウトが建ててやって通っていた、「別宅」だった
ちなみにお妾さんに子供はいない
夫に「なんでそんなところに行かなきゃいけないの」と食ってかかったが
「第二の姑みたいなものだろう」とウトと夫に説教され、それ以上言い返せずしぶしぶ従った
このあたりは「いい嫁キャンペーン」てやつだった
トメに「あの人(お妾さん)のことって、お義母さんはいいんですか?」と聞いてみたことがあるけど
「無口で何を考えているかわからない」(夫談)というトメは「まあね…」と言うだけだった
958の続き
当時は携帯電話は普及してなくて、固定電話が各家庭に1台という時代
その頃の一戸建ては、たいてい玄関から茶の間に通じる廊下の脇に電話台が設置されていた
私や友人たちは結婚したり仕事が忙しかったりであまり遊べなくなったので
仲の良い友達と電話で話すのが息抜きだった
ある日、友達と電話でキャッキャと話していて
ふと気配を感じて振り向くと、トメが後ろにいる
それも、私と背中合わせで30センチくらいしか離れてないところに静かに立っている
トメと私は同じくらいの背丈なので、私の目の前にトメの後頭部があった
悲鳴を上げそうになって、早々に電話を終わり
「何してるんですか!」と怒鳴りつけたら、何も答えずに茶の間へ消えていく
追いかけて「ひとの電話を聞いてないでください!」と言うと
「ああ…」とそっぽを向いたままつぶやくだけ
気持ち悪いので夫に訴えると「なんか(私に)用事があったんだろ」とスルーされた
別の時、私の妹からの電話で、仕事の愚痴を聞いてやっていると
またもトメが背中合わせにヌ〜ッと立っている
たぶん、私の電話が長話になって、私がそっちに気を取られているのを見計らって立っている
腹が立ったというか邪魔だし、妹のあれこれの事情は知られたくないので
トメの背中をドンと押して、手ぶりで「あっちへ行け!」と示すと
トメはそのままぬるぬるとした足取りで茶の間へ消えた
もうやらないだろうと思ったら
また別の電話の時、今度は「押されないようにしよう」と思ったようで、足元にしゃがんでいた
危うく蹴り飛ばすところだった
ウトや夫がいる時は私も長電話はしないので
トメと私しか家にいない時、私が電話しているとこれをやる
その都度、「あっちへ行け!」と示すと、おとなしく去る
959の続き
何度トメに怒っても夫に訴えてもらちが明かず
いっそテレホンカードを買って公衆電話を使おうか(←当時の若者は、長電話を親に叱られるとそうしていた)
と考えていたところ、その電話に、夫の不倫相手がかけてきて、夫の不倫が発覚
今度は離婚の話し合いで、私の実家や弁護士との電話が増えたが
トメはもれなく近寄ってきて後ろに立ったり足元に(ry
私も気が立っていたので、片手に受話器、片手に電話機を抱えて
トメを肘でガンガン小突きながら茶の間に追い込むという乱暴なことをしていた
他に嫁いびりらしいことはされたことがない
というか、思い出してもトメと「会話」した記憶がない
ウトは会社帰りに夕食をお妾さんのところで食べて、夜遅く帰って来るので
トメは自分一人の食事を一人で作って食べていた
私が「一緒に作って一緒に食べましょう」と誘っても生返事するだけで、加わってこなかった
今、自分がトメ世代になってみると
多分トメは寂しかったんだけど、私とどう接していいかわからなかったんだろう
だからって私の電話を私にくっついて聞いていていいということにはならないけど