ある時の兄貴の休暇中に両親が突然兄貴を呼び出して告げた
「お前を漁師にさせるわけにはいかない」と
これには俺も姉貴も驚いた
どう考えても誤った判断だ
親が言うにはそのまま実家へ金を入れつつ研究を地元の役に立ててほしいということだった
さすがの兄貴も「いや今まで俺は漁師を継ぐためにやってたんだから
それは無いだろ父さん突然すぎるし遅すぎるよ」と珍しくちょっと怒ってた
それでも両親は頑なで、兄貴がチラッと俺や姉貴たちを見て助けを求めてたのがわかった
この時の俺や姉貴達は馬鹿だった
完璧すぎる兄貴に意地悪できるなと考えてしまったんだ
俺達は兄貴へ助け舟を出さず見捨てた
兄貴も助け舟がないことを察し観念してか「わかった」と小さく呟いて自室に戻っていってしまった
次の日の兄貴はいつも通りだった
「あぁ言うんだもの仕方ないだろ親父もボケたか?w」と笑い飛ばしていて安心した
それからの兄は両親の言うとおりに金を入れて研究を地元で活かしていた
兄貴ではなく俺が継ぐということになったので兄貴は「帳簿くらい読めるようになれ」と俺に経営の指導を始めた
流石の俺も金のことがわからないのはヤバイと感じたので真面目に兄貴の話を聞いた
それから3年が経ち、兄貴は突然1人の女の人を連れてきた婚約者だ
俺はここからは推測すら立たない
なんでこうなったか全くわからない
両親と姉貴達が兄貴の結婚に大反対した
姉貴達が中心となって「お前は絶対に騙されてる」「この女は水商売女か?」などと罵倒した
両親も「お前が入れてくれる金が少なくなるのは困る」「まだ結婚は早い」などと言うのだ
俺は兄貴が嫌いだ
でも1人の男としての尊敬できるし俺が漁師の跡取りとして目指すべき目標だとも思ってた
だから兄貴の婚約者を見た時は「美人捕まえやがったな隠れてうまいことやってんじゃんwww」くらいにしか思ってなかった
でも他の家族が反対を始めた
婚約者さんは涙を流し、あの兄貴が激怒した
「俺の家族となろう女に対して何なんだその態度!?水商売女だぁ!?お前ら頭おかしいんじゃねえか!?」
「このクソ野郎ども・・・もう我慢の限界だ!俺がどんなに自分の家族が欲しかったか・・・俺がどんなに新しい家族を紹介できることを楽しみにしてたか・・・」
「俺は家族のためにずっと!ずっと!クソガァァァ!!!」
こんなに怒り狂った兄貴は初めて見た
あまりの怖さに俺は声も出なかった
「お前らはもう俺の家族じゃねえ!一銭の金も渡さん!知恵も渡さん!研究データも全部消してやる!!!」
「許さねえからな!絶対に俺は許せねえぞ!!!お前らとは親でも子でも姉弟でもねえ!絶縁だ!俺はお前らを捨てる」
「帰るぞ○○(婚約者)!俺を敵に回したことを後悔させてやる!!!」
怒り狂ったまま兄貴は家を出て、そのまま帰ってくることはなかった
ここからうちの家の没落が始まる
次早く早く
うちに起きたことはまず地元での評価が著しく下がった
誰が流したのか事の顛末が地元で知られ白い目で見られるようになった
今まで兄貴が知識と経験で整備していた船の整備精度が落ちて故障率が圧倒的に増えた
兄貴が造船所と話し合って作ったものだから細かい部分は兄貴と造船所しか知らない
そして造船所が非協力的になった
造船所も兄貴の知識を得られていたので信頼を寄せていたが、兄貴が居なくなればお察しだ
更に銀行からの融資額も桁単位で目減りした
漁協魚連もうちをテキトーに扱うようになった
地元の情報共有すら危うくなったので兄貴の力で上がってた漁獲高もみるみる下がる
経営は2年で思いっきり傾いた
漁獲高を仕事量でカバーするために義兄達も仕事の合間に手伝ってくれるようになるが全く足りない
そして最後に年齢と過労とストレスで親父が死んだ
親父が死ねば俺の経験量なんて雀の涙ほど
経験を補う兄貴のような知識量もない俺ではどうしようもない状況へ陥った
今回は
兄の心 父姉弟知らず
義兄が余計なことを姉と父に吹き込んだ。