引越しから3ヶ月ほどした時、アパートの1階に小さい女の子を連れた夫婦が越してきた。
女の子は2歳くらい、奥さんは気弱な感じで旦那さんは留守がち。
セコさんは留守ばかりでたまに会ってもあまり物を分けない私よりも
そっちの方がいい獲物に見えたらしくて、うちには夜のタカリをあまりしなくなり
1階の奥さんのところによく行くようになった。
ほっとしていたある日曜日の昼下がり、外出しようと部屋を出たら下でなにやらもめている。
1階の旦那さんがすごく怖い顔で怒っていて、女の子に怒鳴りつけていて
奥さんは横で小さくなってた。
どうやら旦那さんの車に女の子が石でいたずら書きしたらしく、旦那さんは謝れと怒鳴り
女の子は怖がって泣くばかりといった様子。
旦那さんは怒鳴ることでさらにヒートアップしてるみたいで、車をバンバン叩いたり
しまいには女の子の頭を平手で何度もたたき始めた。
そこへ、セコさんが出てきて猛烈な勢いでダッシュして女の子の前に仁王立ち。
「あんたこんな小さい子になんてことするの!このカス、クズ、それでも親か!
子供いらんならうちに寄越せ、ちょうど女の子欲しかったからもらってあげるわ。
あんた(奥さん)も子供守る気がないみたいだからいらないんでしょ、ちょうだいよ。
この子は私が育てたげるから!」
とかなんとかすごい勢いでまくしたてるもんだから、さっきまで顔真っ赤にして
怒鳴ってた旦那さんも顔ポカーンで「や、その…」とか言って黙った。
他の古参住人が仲裁に入ってその場をおさめ、私は出かけたんだけど
それ以来しばらくアパート内でのセコさんの地位が急上昇した。
調子に乗ったセコさんがますます図々しくあちこちでタカリを繰り返したから
すぐにまた無視されるようにはなったけど。
それにしても、もらってあげるなんて言葉があんなにかっこよく聞こえたのは
あれが最初で最後だなあ…。
なんて美談みたいだけど、おととい偶然10年ぶりにそのセコさんにバッタリ会ったら
相変わらずクレクレ(ちょうど手に持ってた、おみやげ用の肉まん)されたわ。
何年たってもそういうのは変わらないね〜。
微妙に「ちょっとイイ話」になってるわ
セコ…恐ろしい子…AA(ry