(>>88のつづき)
1週間後の日曜日。いよいよ作戦決行です。
夫が手にICレコーダーを持っていて、それを壁に近づけたかと思うと、
スイッチオン。懐かしい音が流れました。
(※ なぜ懐かしいのかは後述。)
やがて、玄関のチャイムが鳴りました。連打しまくりです。
ドアを開けるとAが立っていて、苦情を言いに来ました。
「うるさい音を何とかしろ! しかも私の嫌いな音じゃないか!」
私はすかさず返しました。
「ははぁん。あなたのしわざだったのですね。」
Aは自分で自分の悪事をばらしてしまったことで我に返り、
「しまった!」
我が家の情報が筒抜けになっていた原因は、
電源タップに仕掛けられた盗聴器でした。
よく見ておけと夫に命じられたAの前で、私は盗聴器を取り外し、
続いて夫が日曜大工の道具で修復不能なレベルに壊しておきました。
そして、夫がいつの間にか用意していたのが誓約書。
「二度と盗聴しない。今度やったら出るとこ出る(=警察署・裁判所)。」
という内容で、Aにサインさせました。
ついでに、カフェと遊園地の領収書も見せ、
支払うべきものを支払わせました。
これで問題は解決しました。めでたしめでたし。
(まだまだつづく)
(>>89のつづき)
ちなみに、盗聴器を通してAに聞かせた音は、「歯医者さんのドリル」です。
夫が通院のときにポケットにICレコーダーを忍び込ませて、
治療中の「キュイーーン」・「ガガガガ」・「ジジジジ」の音を録音したのです。
ただ、患者が聞く音は、耳から入る音のほか、歯から伝わる音も加わります。
歯から伝わる音は録音できないので、
夫は取引先の金属加工工場に出向いて、
ディスクグラインダーで鉄板を切るときの
「グゴゴゴゴーー」という音を録音してきてくれました。
これが、歯医者さんの患者が歯から伝わって聞く
ドリルの音に似ているそうです。
録音した2つの音(歯医者さんのドリル、金属加工のグラインダーの音)を
音声加工ソフトウェアでうまい割合に調合し、Aの嫌いな音が完成。
リアルさの高いできばえです。
これを盗聴器のそばで1時間にわたって延々と再生したというわけです。
付け加えると、私と夫は、歯医者さんのドリルの音は苦手ではありません。
今は別の職業ですが、元々は歯科医院で職場結婚した夫婦です。
なじみがあって懐かしい音なのです。
おわり。