うちの姑はリサイクル大好き。
少し前に牛乳パックスツールの作り方を老人会で習ってきたとかで早速一つ作り、さらにそれを芯にして周囲にボロ布を巻いて饅頭型にし、古いセーターなどをほどいた色とりどりの毛糸でカバーを編みつけて、とてもゴミ同然のものが材料とは思えない椅子を作っていた。
あんまり出来がいいので本人もお気に入りらしく、よくウッドデッキに置いてそれに座って日なたぼっこしながら編み物をしていた。
ある日、用事で姑の家に向かっていたら、小学校低学年くらいの男の子が極彩色の大きな丸いものをごろごろ転がしながら歩いているのを見かけた。
色合いにピンときて男の子を呼び止めたら、やっぱり姑の椅子。
「これどうしたの、あの家(すぐそこが姑の家だった)のお庭にあったやつだよね?」
と聞いたらその子は困ったように「ママが取って来いって言うからとった」
と言って、椅子を置いて走って逃げ出した。
仕方ないのでその椅子(ぼろが詰まっているので激重)を私がかついで姑の家に戻したけど
道路を転がされたもんだから、せっかくのカバーがぼろぼろになっていて、
姑は「せっかく苦労して編んだのに…」とガッカリしていて可哀相だった。
姑にいろいろ聞いたが、泥棒しようとしていた男の子には心当たりがないそうで、そのときは、悪い子もいるものだ…で話を終わらせた。
そして、それから一週間ほどした昨年のクリスマス。
ケーキとプレゼントを届けに、また姑の家に行った。
例の椅子のカバーは編み直されてすっかり綺麗になっており、外に出してまた盗まれると困るからと、玄関の上がり口で置物の台にされていた。
家に上がって一緒にケーキを食べながらおしゃべりしていたら、誰かが来た。
出てみたら年配の女性(Aとする)で、椅子を返せとわめいている。
落ち着かせて話を聞いたら
「娘の家から盗まれた椅子が、この家のウッドデッキに置かれていた。
どこに持って行った、返せ!あれは北欧家具の店で買ったもので30万もするそうだから失くしたのなら現金で返してもらう、さあ出せ!」
とのこと。
姑が「それってこの椅子ですか」と手作り椅子を指し示すと、Aは写真を取り出して
(いつの間に撮られていたのか、ウッドデッキに置いてあったときの写真)
見比べ、これで間違いないと言った。
姑は、必死で笑いをこらえている顔で「本当に30万もする品なんですか?」
と何度も確認し、Aはそのたびに「娘がそう言ったのだから間違いない」と言うのでじゃあ調べてみましょう、と姑は椅子を解体・・・