次第に食器回収の時に待ち構えて居るようになり、しまいには謝って帰ろうとするバイトの腕を掴んで「まだ終わってない」と、一時間ぐらい文句を言うようになった。
それまでは昼時とか時間がかぶる時間帯はメニューが被ったり家が近かったりすると一人が二三件に出前を届けたりしてたんだけど、そうなるとばあさんのせいで他の家に届けるのが遅れる。
だからばあさんの家を最後にすると今度は遅いと文句が追加され…
ばあさんちへの出前が罰ゲームになって、バイトが何人かやめるようになって、兄もやめた。
遂に店主が切れて、ばあさんからの出前の注文に
「ウチではどんなに努力してもお口に合うものが作れないので注文は遠慮して欲しい」
と電話口で言ってしまった。
それから何回か電話来たけど、同じ事言って拒否。それから一月ほどして、ばあさんの息子の奥さんからばあさんがストレスで倒れたと店主に連絡があった。
なんでもばあさん、旦那が転勤で見ず知らずの土地に引っ越してきて、旦那はそこで定年まで勤めて退職後数年で亡くなり、息子夫婦がばあさんの家の近くに転勤する際にばあさんを誘って同居。
でもばあさん、50過ぎてからの引越しで友達も作れず、息子夫婦はたまに一日中居ない。
息子夫婦が不妊で孫も居なくて、さびしかったから出前を届けに来るバイトと話しているのが本当に楽しかった、家では出前はいつも美味しいと感謝していた、素直になれなかっただけで反省してるから許してやって欲しいと。