普通に考えれば、大して仲良くない男からそんなことを言われたら怒るのは当然。
特に相手は族の兄ちゃんで、周りの族の人が敬語使ってたところを見ると、かなり権力が上の人だったみたい。
ブチ切れた族の兄ちゃんは、ムナぐら掴んだままナル男を外に連れ出してった。
店内に残された俺は呆然。
その時、店の中に他の客もいなくて、店長も不在。
冷静に考えれば、そこで迷わず110番だろうけど、俺は完全にテンパってた。
それで、これまた恐る恐る外に出て、ナル男が連れてかれた場所に行ってみた。
そしたら、そこの光景を見て鳥肌立った。
壁際に立たされたナル男を十数人の特攻服を着た兄ちゃんが取り囲んでた。
ナル男は泣きながら「すみません」って叫んでたけど、空気的に完全にこれからリンチされること必至だった。
俺、更に焦りまくり。
ヘタレな俺は、すぐにその場からの離脱を考え少しずつ後ろに下がってた。
けど、そん時にタヒんだじいちゃんの言葉を思い出した。
俺は小さな頃からじいちゃんっ子だったから、いつもじいちゃんにべったりだった。
そんなじいちゃんもその1年くらい前にタヒんじゃったけど、タヒぬ前に俺に言った言葉がある。
「困ってる知り合いがいたら、出来る限り助けろ。じいちゃんと約束しろ」
俺、じいちゃんと指切りして約束してたんだ。
それを思い出したら、なんかこのまま逃げたらじいちゃんに怒られるって思った。
だから俺、それまで一度も出したことなかった勇気みたいなのを振り絞って、その兄ちゃん達のところに行ったんだ
俺が人波をかき分けて、ナル男の前に出ると、さっそく族の兄ちゃん達がスンゲエ怖い目で俺を睨み付けてきた。
「なんだよお前!!」
「さっさと消えねえとコロすぞ!!」
俺、チビりそうになってた。
それでそっから、必タヒに頭下げた。
「すみまんせんでした」
「こいつも悪気があったわけじゃないんです」
「許して下さい」
なんで俺がこんなことしなきゃいけないんだって思いながらも、必タヒに謝ってた。
最初の方は俺もムナぐら掴まれたり、突き飛ばされたりもしたけど、それでも必タヒに謝って土下座までした。
ずっとそれをしてたら、最初にナル男のムナぐら掴んだ兄ちゃんが「もういい」って言ってきた。
その言葉で、他の族の兄ちゃんがぞろぞろと離れて行って、最後に兄ちゃんが「お前に免じて許してやるよ」って俺の肩叩いて言ってきた。
俺、その人にまた必タヒにお礼を言った。
それで、ナル男の方にいったら、ナル男はガクブルしてた。
しかも俺に、「来るのが遅いんだよ」なんて毒吐いてきた。
まあ安心したからだろうって俺も気にせず、そのままバイトに戻った。
ちなみに、ナル男は体調不良とか言って途中で帰った。
それからはいつも通りバイトした。
ナル男はしばらく休んだけど、それから普通に復活して、またいつものように俺に武勇伝を話してきてた。
俺に一言も礼はなかったけど。
それから一週間くらいたった時、何かが起こった
「付き合って下さい」
レジしてたら、目の前の姉ちゃんからいきなり告白された・・・