伯母とは初めは遠慮したり喧嘩したりだったが、伯母は愛のある人で、段々実の親子のよう
になった。
数年前私を勘当した実父が脳梗塞を起こし、入院しているという連絡が実母から来た。
母や弟、看護士さん達には
「離れて暮らしてて親孝行も出来なかった。今こそ父の力になりたい」
と言って、世話役を買って出た。
せっせと世話しながら、麻痺で寝たきりで口もきけない、視覚もほとんどない父の枕元で、
「お父さんといると、小さい頃よく思い出すなあ」
「おばあちゃん、よく言ってた。親が決めた望まない結婚だったって。跡継ぎの男産んだんだからって、子供置いて出てこうとしたけどダメだったって。おばあちゃんって、お父さんのこと、どうでも良かったのね」
「○○(弟)ね、お父さんタヒんだらあの家売って、お母さん連れて奥さんと東京引っ越すんだって。お墓はこっちなのにね。何だか『早くタヒね』と言わんばかりに上京をみんな楽しみにしてるのよ」
「あのね、内緒にしてたんだけど、あの日あの女の人が誰か、私知ってたのよ。こんな田舎だもんね。みんな知ってたし私も知ってたよ。タヒんだらいいなと思ったけど、流石にタヒななかったね。あの後5年くらいは生きてたんでしょ?」
父は食事をほとんど摂らなくなり、リハビリも拒み、強いうつ病の薬を飲み続け、1年たらずで別の病気で他界した。