旦那「はい、何か?」
男「この時期ってこんなに混むんですねぇ…はは、田舎だから大丈夫だと思ってたら、自由席までいっぱいで」
旦那「はぁ…」
男「実はうちのが、その、妊娠中でしてね。」
男が指差す先を見ると、お腹を撫でながらニコニコ微笑む奥さん。
元来のんびり屋の旦那は、「??」となってるが、
あー、つまりは席寄越せってことねと私はピンときた。
いらっと来てたものの出来るだけ穏便に
「すみませ〜ん。私達もあと四時間近く乗るもので。もうすぐ車掌さんくるんで、早めに空く指定席がないか、聞いてみてはいかがです?」
と早口に捲し立てた。
その瞬間の奥さんの豹変が怖い怖い。
顔がすっと、能面のように真顔になった。
うへぇ、と思いながらも、「そうですかー」と引き下がってくれたので、旦那と私はほっとムネを撫で下ろした。
(後で聞いたら、私が断ってる時に初めて席クレクレだと気づいたらしい)
よーし、もう安心。
と、買ってきた本を開いて、20、30分経った頃…
「あの〜……」